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 DLC国際標準化のためのワークショップ(第4回) 

 

平成22年11月19日(金),東京工業大学大岡山キャンパス西9号館コラボレーションルームにて「第4回DLCコーティング国際標準化のためのワークショップ」が開催された.このワークショップはニューダイヤモンドフォーラムがNEDOから委託されている「戦略的国際標準化推進事業/標準化研究開発/ダイヤモンドライクカーボン膜及び評価方法に関する標準化」に係る事業の活動の一つとして,同年9月15日にドイツで開催された第3回ワークショップを受けて企画されたものである.DLC規格化委員長である斎藤秀俊教授(長岡技科大)を委員長,DLC標準化調査WG主査の平田敦(東工大)を幹事,標準化調査WG委員8名およびNDF田中章浩事務局長を委員とした組織委員会により運営がなされた.開催の趣旨・中心課題は,

1.先進国におけるDLC規格化の動向の調査

2.自動車,電機,工具,機械部品など産業界からの要望の調査

3.DLCコーティングを分類するための主要パラメータの特定

4.DLCコーティング分類のための評価法の明確化

5.産業界でのDLCコーティング供給に関する指針

6.世界規模でのラウンドロビンテストにおける特定技術の秘密保持であった.

ワークショップは国際セッションと国内参加者向けショートコースの2部構成であった.国際ワークショップは基調講演および海外招待講演,ポスターセッションで構成されていた.またショートコースは,国内でDLCと関わる企業の技術者やユーザに対して,委託事業に係る委員会の活動を広く周知する目的で設けられ,委員会活動の概要に関する講演1件,DLC分類に大きな役割を果たす分析評価法に関する講義3件,委員会での活動成果に関する講演1件,およびディスカッションがなされた.以下にプログラムの概要をまとめる.

●国際セッション

基調講演として斎藤教授より「Worldwide standardizationactivities on diamond-like carbon」と題し,DLC標準化の世界的な動向,日本国内での活動の大要について解説があり,今後のISO提案に向けた活動プランが提示された.次に海外招待講演として韓国のKwang-RyeolLee博士(Korea Instituteof Science and Technology)が「Application of DLC Films on Soft Polymers for Surface Nanostructuring」と題する講演を行った.自身の研究である高分子材料表面へのDLCコーティングを話題の中心としたが,それに先立ち韓国におけるDLC標準化に対する取組みや展望について説明がなされた.その後,10件のポスター展示により,DLC膜の合成,評価からアプリケーションまでの幅広い内容について企業から1件ならびに大学から9件の発表がなされた.

●ショートコース

昼食をはさみ,午後は「DLC規格化に向けた日本におけるDLCの構造評価および分類」と題したショートコースが国内参加者向けに開催された.まず,斎藤教授より「日本におけるDLC規格化に向けた活動について」と題して,国内における活動を中心のトピックとしてDLC標準化への取組みについて簡潔な紹介がなされ,その重要性が強調された.そして,DLC分類の基礎となる重要な構造解析・分析評価法に関して,神田一浩教授(兵庫県立大学)から「シンクロトロン放射光を利用したNEXAFS測定によるDLC膜の局所構造解析」,赤坂大樹氏(長岡技術科学大学)から「X線反射率法および表面プラズモン現象を利用したアモルファス炭素膜の厚さと真密度の測定」,鈴木常生氏(長岡技術科学大学)から「ERDA/RBSによる定量的解析」と題した講義がなされた.ここで取り上げられた解析評価法はDLC膜のsp3/sp2成分比,密度,水素含有量を高い信頼性をもって同定するために欠かせない手法であり,解析原理,測定手順から試料の調整,ほかの手法との比較など基礎的な内容について非常に平易な解説がなされた.これら講義の後,紹介された解析評価法を利用して実施されたDLC分類作業の経過について「ダイヤモンドライクカーボン膜の合成と分類」と題して大竹尚登教授(東京工業大学)より講演がなされ,得られた成果と今後の課題がまとめて紹介された.

ダイヤモンドシンポジウム3日目と同日の開催ではあったが,参加者は50名と盛況であり,講演・講義後に行われたディスカッションでも活発な質疑応答がなされた.最後に,DLC標準化に関する国内意見を収集するため,参加者を対象にアンケート調査が行われた.このアンケートの結果はISOやJISの素案を作成する際の参考にされるとのことであった.なお,第5回は韓国にて開催予定とのことである.

 

平田  敦(東京工業大学)

 

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